“なんでもない自分”と思うとき

アルバム制作-2019-

良いライブを観たり、良い本を読んだり、良い映画を観たり、その度に僕はワクワクとして、”自分でも何かやってやろう”という気持ちでいっぱいになります。そういう、夢を与えられる瞬間が今でもたくさんあります。子どもみたいな感覚だけど、夢見ることが好きです。

僕は昔、音楽とは関係のない仕事をサラリーマンとして3年半していました。しながらやっぱり、音楽をやる夢を見ていました。イヤホンから流れる曲を聴いて元気になる、感動する。ライブでお客さんと一体になる。そういう妄想力には自信があって(笑)、自分にも出来るんじゃないかという気で体中が包まれました。

そうして始めた音楽活動。会社に辞表を出してすぐ東京へ。小さな机にノートパソコンひとつ、そしてギターと鍵盤。シンガーソングライターを名乗るものの、自分でもそれが一体なんなのか、本当の所わかっていなかった。ただただ自分の曲を作っては歌う毎日。今でも褒められたもんじゃないけど、始めたての時は本当に歌が下手くそで、音源だって聴けたもんじゃなかった。でも、やっぱり音楽が好きだったから、それでも続けて来れた。

2012.08.26

普通、シンガーソングライターがするのは、曲を作って歌うまで。アレンジしたり音源にしたりするのは他の人に任せるのが大半。だけど僕はなんでも自分でやりたかったから、完成までに必要なことを自分で出来るように勉強してきました。だから、僕のシンガーソングライターとしての歩みはものすごくゆっくりで、振り出した一歩が降りるまでにすごく時間がかかります。歩幅は大きいけど速度が遅い。そんな感じ。足の速い人が羨ましいし、比べちゃうし、落ち込むと自分を否定したくなります。

何かを理解するために”比較”はものすごく役立ちます。でも比較を実際にする時は、その結果が辛い時の方が多い。というか自分の優越感のために比較を持ち出すことなんて普段あまりない。というか正確悪い(笑)。嫌な時だけ出てくるんですよね、比較って。

いつでも自分の歩みに自信を持っていたい。誰が自分を追い抜いたとしても、どんなに憧れが遠くにあったとしても、自分が自分の歩幅で歩めていれば良し。むしろそれが自分の誇り。そう思えるようになった頃につくった曲が『歩幅』でした。

小さなメモ用紙に『歩幅』の歌詞。日付は2016.12.13(
昔のようで最近)

この時のことをすごく覚えてる。ライブをする度、他の人の良いライブを見る度に落ち込んで、何度も同じように落ち込んでいる自分がまた重ねて嫌だった。自分が作っているものに全然納得がいかないし、すごくちっぽけで、取るに足らない存在に思えた。なんにもして来なかったんじゃないかと思うほど、自分の存在が軽く思えた。なにも出来やしない。なんでもない自分。なんでもない自分。

そんな気持ちを励ますために、僕は音楽をやっている自分に向けて『歩幅』の歌詞を書きました。自分を否定してしまうような劣等感に、もう負けるものか! ”いつでも 自分の一歩を 進めれば”、僕は落ち込む度に、その気持ちを何度も思い出しながら活動をして来ました。その姿勢は、今も同じです。

今回のアルバム制作、最初に取り掛かったのがこの『歩幅』です。連日空いた時間に制作を続けて来て、アレンジがほぼ固まって来ました。アルバムが出来て、この歌がみんなに届く時、僕と同じように悩んでいる人が救われたらいいなと思っています。その気持ちを込めて歌います。まだ少し先だけど、早くその瞬間が来ることを、夢見ています。

(つづく)

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