アルバムタイトルに込めた思い

アルバム制作-2019-

ルーレットの円盤上を散々回っていた球が数字の穴に落ちる。それまでドキドキしていた時間とは対照的に、決まる時は一瞬で、実にあっけない。

今回のアルバムのタイトルが決まった時、まさにそんなあっけなさがありました。あっけないとは言え、僕の中では「大当たり」。当たった瞬間がそのまま決定の瞬間でした。

アルバムのタイトルは「君を思う幸せ」。これは収録曲にあるタイトルと同じで、これを見た瞬間に「これだ!」と決めました。僕が込めたい思いが、良い具合に言葉になっています。

アルバムのタイトルを決める時に、あと銭湯の湯に浸かっている時に、僕はよく人生を振り返ります。

前回のアルバム「紺に染まれ」の時の僕のテーマは、「自分らしさをどう保つか」でした。自分らしくいるということがどういうことなのか、そのために必要なことはなんなのか。そんなことをたくさん考えていた時期だったなと思い出します。

僕の場合は、どうやら、自分らしくいることに遠慮があったのだと思います。他人を気にしたり、正しさを測ったり、そんなことを考えているうちに、だんだんと萎縮してしまっている自分に気がつきました。

自分が自分らしくいることに一生懸命になっても、他人に迷惑がかかることは思ったほどないということを学んだのです。

頭の中をリセットして、とにかく自分のしたいことや、自分の好きなことばかりを考えました。自分らしさに、自分自身が染まっていったのです。「それでいいんだ」と思って、その気づきをタイトルにしたのが「紺に染まれ」です。

さて、そんな自分のことばかりを考えて生きて来た僕は、順当にという感じで、「社会」と出会いました。社会というのは、自分以外の人や人たちのことです。

この「社会」との出会いは、僕にとって新鮮でした。今までずっと社会にいたつもりでしたが、なんとなく輪郭がぼやけていて、自分と社会がごっちゃになっていました。それが、自分の輪郭をまずはっきりさせたことで、社会の方も輪郭がはっきりとするようになって来たのです。「はじめてちゃんと出会った!」という感じです。

社会に出会って感じたことはいろいろありましたが、ひとつ嬉しいことがありました。それは「人を思う幸せ」です。

自分らしく生きることは、自分にとって良いことです。しかし、自分のことを考えることだけが僕の喜びではありません。自分以外の人を思うことでも、僕は喜びを感じます。その幸せを発見しました。

僕は少しずつ、自分の歩いてる道を理解しながら歩いて来ました。「自分」を経て、今「社会」に出会うところまで来ました。そんな「今の自分」を表現するぴったりの言葉が、「君を思う幸せ」だったのです。

最後にジャケットの話です。自分の部屋で、自分の好きな音楽をやっている自分が、窓の外の世界を見ている。奥にあるドアは開いていて、社会へのオープンな気持ちを表しています。

僕のジャケットはいつもシンプルですが、前回同様、僕の気持ちを素直に表せられているので、とても気に入っています。

……なんだか哲学のような話になってしまいましたが、僕がひとつひとつ確かめながら歩んでいる道が、少しでも皆さんにとっての「お楽しみ」になってくれたら嬉しいです。

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