こぼれ落ちそうだね、人生はいつも。

アルバム制作-2019-

アルバム制作、アレンジ作業が終わり、ボーカルのレコーディング段階に入ってきました。収録曲も決まって来て、進捗は動画でお知らせしているので、ブログでは、1曲1曲にまつわる話を書いていこうと思います。

今回は『フィルム』です。この歌はシンガーソングライターの大先輩である杉本ラララさんが良いと褒めてくれまして、それをきっかけに音源化が決まりました。その第一段階は既にYoutubeに上がっているのですが、今回、アルバム用にボーカルレコーディングをし直して再調整することにしました。少し遠回りですが、フィルムの話、聞いてください。

……

フィルムは、光を焼き付けることで像がそこに残ります。一度焼き付けられたフィルムは、現像することでいつでも撮った時の画を再現することが出来ます。

消えていってしまうものがあり、残そうとする工夫があります。人生という時間は、どこに残っていくのでしょうか。

一瞬一瞬が過ぎていきます。ぼーっとしていると、時間は水が蒸発するがごとく消え去ってしまいます。思い返すための手がかりさえも、もうその時にはありません。

反対に、思い出のような、長い間残っている時間もあります。人生のひとつひとつを噛みしめる時、決まって僕は何かを思い出しています。だから僕の中で思い出は、とても「人生らしいもの」のような気がします。

いつか過去を振り返って、思い出せなくなってしまった時間は、もうすでに人生の外側へこぼれ落ちてしまっていて、それを再び拾い上げることは出来ないことがほとんどです。

大切な記憶をすべて忘れずに覚えていると、僕は言い切ることが出来ません。だから、今はまだかろうじて人生の縁にしがみついている記憶も、悲しいかな、いつか人生の外へこぼれ落ちてしまうのかもしれません。こうしてみると、人の時間はとても儚いものです。

なんの感情も刺激しないただの事実を、いつまでも覚えていることは少ないように思います。歴史の年号のように、ただ覚えるというのはそもそも難しいことです。何かを強く感じてはじめて、覚えておくにふさわしい時間に昇華するようです。

そう考えると、人を思うことの素晴らしさは、思っている時間が思い出になることにあるのかもしれません。なみなみと思い出に満ちた人生を後で振り返る時に、あんな瞬間、こんな瞬間と、味わえる喜びです。

今回改めてCDに入れようと思った『フィルム』という曲は、長年連れ添った二人の関係、二人の間にある思い出の歌です。人生のひとつひとつを数えるような、そんな歌です。

(つづく)

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